『マルガレーテ・シュタイフ テディベア 神さまからの贈り物』彼女が引き籠っていたら、テディベアは誕生しなかった
出版:2010年
著者:ウルリケ・ハルベ・バウアー 氏 ― ドイツ語と歴史の講師を務めつつ、伝記小説数作を手掛けるドイツ人。
前職でシュタイフ社の限定テディベアを扱ったときに、シュタイフの創業者に興味が湧いたので借りてきた。シュタイフ社の創業者であるマルガレーテ・シュタイフさんの日記を基にした伝記小説。
まだまだ女性は家の中が当たり前だった19世紀後半に、女性であることに加えて手と脚の麻痺を抱えながらも、世界規模の会社を創り上げてしまった凄い人。著者が歴史の先生なので、当時のドイツ家庭の様子とか、産業革命の影響とか、会社のあれやこれやなどの描写にも定評がある。
本著の通りだとすると彼女はかなり勝気な性格で、相当なキレ者だったらしい。腕が不自由なのに、どうやってぬいぐるみを作っていたのか、女性の社会進出にどのようなかたちで貢献していたのか、などなどを知ることができる。
テディベアの登場は終盤なので、メインはマルガレーテさんの人生と、シュタイフ社の起源について。そもそも、テディベアを考案したのはマルガレーテさんではなく、彼女の甥だったりする。シュタイフ社が最初に作ったぬいぐるみはゾウなので、マルガレーテさん自身はゾウのぬいぐるみの方が思い入れが強かったかもしれない。
しかし、当時は女子供の玩具でしかなかった(であろう)ぬいぐるみが、20世紀中にドイツやイギリスを追い越して世界の中心となったアメリカを起点とし、世紀を超えて世界中で愛され続けているのをみると、男尊女卑やハンディキャップでも人生諦めずに努力し続けたマルガレーテ・シュタイフという女性の生き様、そして女性と言う存在の変遷を体現しているように思えてくる。テディベアはその象徴と言っても過言ではない。
もしもマルガレーテさんが21世紀に生きていたら、一体どんな会社を作ってくれたのだろうか。