セミリタイアするまで非正規

正社員になれないことが分かった三十代。労働者のままでは死にかねないので、非正規のままセミリタイアを目指している、色んな意味で駄目なヤツ。

『人間関係を半分降りる ――気楽なつながりの作り方』 「人間は素晴らしくない」という生き方・考え方

 社会不適合者的な著作を発行したり、講演やインタビューを行っている鶴見済さんの新刊。近所のTSUTAYAには取り扱いがなく、2軒目の紀伊国屋では売切れており、3軒目のブックファーストでようやく見つけた。

 タイトル通りの内容で、人間関係には友人、家族、恋人、職場、SNS等が含まれる。これらのあり方・常識に疑問を投げかけまくって、最終章の『こうすれば気楽になれる』へと繋げる構成。

 

 「人間は素晴らしくない」。とても素晴らしい言葉である、私も胸のすく思いです(笑)。「みんな同じ」なんて気持ち悪い、というのも、日本人にもっと必要な感覚だと思う。

 ちなみに、この2つを反対の意味にして合体させると「人間は全て同じように素晴らしい」になり、まさに現代の日本に溢れかえっている思想そのものとなる。みんな素晴らしいと嘯きつつ、自分たちと異なるモノを暗に排除するこの考え方に、どれだけの人間が苦しめられているのだろうか

 

 

 個人的に、本書は「第2章 家族を開く」「第3章 恋人をゆるめる」が本筋だと思っている。もちろん、「第1章 友人から一歩離れる」も大事だし、そこで書かれている居場所作り(サードプレイス)の考えも大事なんだけど、もうその辺りはメディアでも語られている。マーケットも「ソロ活」とか言ってるし。

 でも、家族と恋人はまだまだ神聖視・タブー視されている。それは、異性と恋人になり、セックスして家族を作ることが、人生の絶対条件とされているからだろう。しかし、これは単なる繁殖行動で、神聖な行事でもタブーな悪行でも何でもない。(なんか忘れられがちだけど、人間も生物の一種なのだから、もっと生物学的な見方が必要だと思う)家族や恋人のいる空間は聖域でも何でもないのだから、留まるのも出て行くのも、作りだすのも距離を置くのも、本来は自由なはず。これは、子供も大人も同じだ。

 

 自分はいつまでもフラフラしていたい。フラフラしたままで、豊かで幸せになりたい。それを遠慮せずに求めればいいのだ。(p146)

 

 これは私も同じ考えだけど、本になってくれて嬉しい。家族と恋人を大切にするのは大変結構なんだけど、そのために自由や幸福の犠牲を強いられたくはない。子供にしろ大人にしろ、人間関係に大きな苦痛を感じる人間がいるという事実は、もっと一般化するべきだ。

 一方で、本書には、家庭や恋人や結婚を否定する言葉も出てこない。これは、著者の鶴見さんが目指す「優しい世界」の姿でもあるのだろう。常識はあくまで疑うものであって、常識を否定して非常識を押しつけるようでは、本末転倒なのだから。

 

 本当は、いつもの読書感想文みたいに引用も使って語りたいんだけど、本書の醍醐味は鶴見さんの書き口調にもあるので、私の手で書いちゃうと野暮ったいから止めた。

 気になる方はぜひ読んでみてください。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ