セミリタイアするまで非正規

正社員になれないことが分かった三十代。労働者のままでは死にかねないので、非正規のままセミリタイアを目指している、色んな意味で駄目なヤツ。

読書感想文:『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』

 

 

こんな本です

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マルクスと金持ち父さんが教えてくれた“目指すべき働き方”
私は、大学時代に経済学の古典『資本論』と、お金の哲学を扱った世界的ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』を深く読み込むことで、その後の人生が大きく変わりました。実はこの2冊は全く同じことを言っています。それは、資本主義経済の中で私たち“労働者”が必然的に置かれている状況についてであり、そこから考え始めることで、どういう「働き方」を選択すればラットレースに巻き込まれず、幸せに暮らしていけるかがよくわかるのです。今の働き方に疑問を持っているのであれば、転職や独立、ワークライフバランスを考えても意味はありません。しんどい働き方は、もっと根本的なところから考え、変えていかないといけないのです。

Amazonから引用)

 

知り合いの方に勧められて読みました。

2012年の本ですが、今読んでも特に問題ありません。著者の木暮さんも、「わたしは、内容が薄れないテーマを意図的に選んでいる」と述べています。

 

 

給料は生活費

資本論』、『金持ち父さん貧乏父さん』を読み込んだ著者によりますと、給料の正体は、労働者一人が次の日も今日と同じように働くために必要な生活費だということです。よくある「給料100万でも1000万でも生活カツカツ」現象は、給料が上がる(=地位が上がる)と、それだけ生活費(きちんとした服、人付き合いを兼ねた飲み代、仕事のストレスを発散するための娯楽、etc)がかかるため。そのため、昇給=幸福という安易な図式は成り立たない、というわけです。

資金も余裕で生活も余裕、というバランスのとれた人生が欲しかったら、単純に昇給目指して労働して…ではイカンという訳です。

 

 

企業が儲かっても、労働者の給料には関係ない

ところで、外食って高いですよね? どんなに簡単で不味いものでも。例えばコンビニの塩おにぎりは塩つけて米を固めるだけで100円です。自分で作れば半額程度で済みます。その差額のうち、企業の利益はどのくらいだと思います? 私は材料費や設備投資費を多めに取ってその分が企業の利益、残った額が人件費で労働者のお給料、と思っていたのですが、この考え方は誤っているそうです。

本書によりますと、塩おにぎりを製造するための材料費や設備投資費は、本来の額がそのまま値段になっているそうです。なので、正確には塩おにぎりの価格構成は「材料費+設備投資費+人件費+企業の利益」になります。あくまで、企業の利益は材料費・設備投資費とは別モノ。

では、企業が「塩おにぎりの利益を増やしたいなー」と思ったら、どうするのか。一番手っ取り早いのは値上げですが、そんなことをしたら下手すれば炎上しかねません!(笑)  設備投資費は固定で、老朽化のことも考えると簡単には減らせません。なので、メスを入れるとしたら「材料費」「人件費」の2つだけになります。

よく「値段は変わらないけど、いつもの〇〇が不味くなった」とききますが、それは材料費を減らすため、安くて質の悪い材料へ変更したのだと分かります。また、「値段と味はそのままで量だけ減った」だと、材料の入荷量を減らしたという見方もできますが、人件費を削った可能性もあります。(使う材料費が変わらなければ、同じ量の材料からより多くの商品数を生産している=労働者の労働量は増えていることになるため)

こんな風に企業の利益が増えているニュースはよく聞くのですが、では外食産業の製造現場で働く労働者の給料が増えたというニュースは…? 全く聞きません。このカラクリも、「給料は生活費」の仕組みを知っていれば理解できます。企業の利益が増えても塩おにぎり自体の価格は変わらないので、労働者が明日も働くために必要な生活費も変わらない、つまり給料を増やす必要がないのです。

 

 

 

高い給料で雇ってもらうには、何が必要か

じゃあ、どうすれば良いの? という疑問に対して本書では、自分の労働力という「商品」の「価値」を高めろ、とアドバイスしています。「価値」を高めるには、時間がかかって簡単には真似が出来ないことができる(=専門スキルを身につける)、そしてたくさんの経営者がそのスキルを欲しがる(=需要がある。本書では「使用価値」という言葉が使われています)が必要です。

需要のある専門スキルを身につけろ、というアドバイス自体は普遍的なものですが、本書ではそのスキルの具体例として、鉄鋼業界など歴史のある業界スキルや、営業など他分野で応用できるスキルを挙げています。逆にSEやプログラミングなどの需要はあるが歴史の浅いスキルは、いつ廃れるか分からず一生食べていくには不適切だとしています。この点は、読む人によって意見が別れそうですね。

 

 

雇われながらも余裕のある生活とは

種類はどうあれ、需要も専門性も高いスキルを身に付けたとします。このスキルで給料が上がるのはもちろん、仕事や生活にも余裕が生まれる(=本書では「満足度が上がる」)ことになります。その理由が、毎日全力を出さなくても、高いパフォーマンスを生み出せるから。

スキルが無いと、ノルマ達成のために毎日全力で仕事をしなくてはならず(或いはそのようなスキル不要で体力勝負の仕事しか任せてもらえず)、サビ残や過労の原因になります。しかしスキルで仕事をしている人は基本給が高い(=「価値」が高い)ため、そんな無茶苦茶な働き方をしなくても十分な給料がもらえます。このスキルがある人とない人の仕事内容の違いが、結果的には仕事や生活への余裕度や満足度の差に現れます。

 

 

マルクスの『資本論』は、現代の資本主義社会人も読むべき

この他にも、商品の値段の決まり方、企業の利益の正体、仕事に対する満足度の上げ方など、面白いことが色々と書かれています。気になったら、ぜひ読んでみてください。

あと、この本は『資本論』をベースにして書かれていまして、資本主義社会を知りたければ避けては通れない一冊とのこと。

 

 

所感

私が『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』を読んで、特に印象に残った内容をピックアップしてみました。まだ1度読んだだけで理解しきれてない部分もあると思いますので、いつか加筆修正するかも。

とりあえず、労働や給料について新しい考え方が増えたのは良いけれど、軽い絶望も感じています(笑)。会社で働くことに疑問を感じる人だけが読むといいかも。間違っても、これから会社員になる人には見せない方が良いと思います、ハイ。