フィンランドでのベーシックインカム調査結果に関する記事が出ている。
結果としては
「ベーシックインカムは、短期的には雇用見通しを改善しませんが、受給者の幸福度には良い影響を及ぼすのかもしれません」
とのこと。具体的にいうと、雇用や収入に大きな差はなかったが、健康状態やストレスなどの精神面に関しては、ベーシックインカム受給者の方が良い傾向を示していた、でも何十%も差があるわけではない、といったところ。
こういう記事が出ると、「ベーシックインカムを入れても大して変わらない、税金が増えるだけ、だから導入は検討するに値しない」となりそうだけど、そりゃあフィンランドで実験しても大して変わらないでしょうよ、と思う。フィンランドといえば北欧3国の一つ、社会福祉の充実で有名な地域だ。そういう国だからこそ、ベーシックインカム実験も行えるのだと思う。もともと、人生の幸福に対して国を挙げてきちんと向き合っている国なのだ。
例えば、これがGDPの低いアフリカの国々の実験だったら？ 毎日きちんと食べられる、子供が学校に行ける、性交渉以外の娯楽が楽しめる、都会に出て仕事を探せる… 素人が考えるだけでも、これだけのことが可能になる。逆にいうと、（アフリカの方々には大変失礼で申し訳ないが）これくらい幸福度が低い国でないと、我々が「おぉ！」と驚きニュースのトップ記事を飾るような華々しい結果は得られないと思う。
では、肝心の我らがニッポンの場合はどうだろうか。（これまたド素人の考えなので妄想程度に考えて欲しい）とりあえず、日本も日本でなかなか格差が激しいので、生活が厳しい人間ほど良い結果が出ることになる。まずホームレスなら屋根が手に入るが、これは精神的に相当良い影響が出るのは間違いない。それからシングルマザーを始めとする、低収入で自分ともう一人以上を養っている家庭ならば、まずは子供の食事や勉強道具などの物質的な生活レベルを向上させることができるし、額によっては親が仕事を減らすなり旅行を計画するなど子供と向き合う時間を増やすことで、精神レベルも充実できる。これも良い結果が出るはずだ。
あとは私も含め日本人の半数に迫ると言われている非正規雇用集団。これは上記2つに比べてグンと数が増えるうえ、仕事や幸福に関してもバリエーションが豊かすぎるので、一言で「これ」という結果は出ないと思う。例えば私がベーシックインカムを受給すれば、ブログのタイトル通り週休3日ないし4日にしてノホホンと生活すると思うので、幸福レベルは改善するが雇用に関しては悪化という結果になるだろう。まあ、人手不足の現代に於いて私のような怠け者はレアケースだと思うので、大方はそれまで本業となっていた非正規の仕事量を減らして就職活動に専念し、正社員を目指すだろう。正社員が増えれば雇用は改善するし、幸福にも影響する。あるいは、時間や資金の不足でできなかった起業や趣味に関する副業（手作りの品を売るなど）を始める人が増えれば、雇用に影響するかは分からないが幸福と経済には良い結果になる。
個人的には、ベーシックインカムが確実に良い結果を出すだろうと考えられるのは、ここまで。非正規よりも豊かな生活レベルとなると、あとは正社員や役員レベルの正規の会社員、あるいは公務員になる。いずれにせよ高給取りだ。ベーシックインカムは、収入が多ければ多いほど意味の薄い制度なので、ある条件の会社でないとほとんど効果がないと思う。（ちなみに資本家には全く意味のない制度なので除外する）そのある条件というのは、「出勤日数の調節が可能で、かつ、出勤していない時間帯に関しては会社側はその会社員に対して一切の強制力を持たない」ということ。強制力というのは、例えば休日中に仕事の電話をかけるとか、特別手当出すから休日出勤よろしくとか、プライベートの時間を奪う真似はしないということ。非正規だったら出勤日数を減らしても問題ない職場も多いだろうが、正社員ではそうはいかない。ベーシックインカムによって収入が増えるのは良いことだけど、言い換えれば収入が増える「だけ」。その増えた収入を活かす時間も同時に与えなければ意味がない。その時間を与える企業が日本にあるかというと、ちょっと私には想像できない。そういう意味で、正社員に対してベーシックインカムは「意味の薄い制度」になる、現状では。もちろん、会社員以上に出勤日数の制約が多い公務員は言わずもがな。
こんなかんじで色々と妄想が膨らむので、せっかくだから社会福祉先進国だけじゃなくて、色んな国でベーシックインカム実験を実施して欲しい。いくら賞賛しようが反対しようが、実際にやってみないうちは、どんな意見も妄想と変わらない。だから是非、確実なデータを取った上で専門家の方々に考察していただきたい。ま、こんな制度がなくても平和に暮らせるのが一番だけどね。
