セミリタイアするまで非正規

正社員になれないことが分かった三十代。労働者のままでは死にかねないので、非正規のままセミリタイアを目指している、色んな意味で駄目なヤツ。

一人で静かに暮らしたいなら、「地方移住」ではなく「お引越し」にしておこう

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 山口県阿武町で今年の5月に、誤入金された4000万円以上の給付金をネットカジノで使い込んで逮捕された事件があった。事件内容もさることながら、この犯人がいわゆる地方移住者で、助成金の対象者であったことも注目されていた。

 記事には、ある地方自治体関係者の証言がある。

「このような住人を受け入れた自治体にも、一部責任があると思います。阿武町は田口容疑者を引き寄せてしまった」

 

 地方移住には興味があって、ちょこちょこと調べてはいた。

 ただ、私の狙いは「人間が少なく自然と人工物の比率が丁度良い場所で、労働に苦しむことなく、一人で静かに過ごしたい」ことであって、過疎地を応援しよう!が目的の地方移住とは違うなー、と何となく感じていた。なので、実家を出て地方と言われる場所で暮らすことになっても、地方移住ではなく、単なる引越しになるだろう。

 

 と思っていたけど、どうやらこの認識は正しかったようで、記事で取材を受けている"山口県周防大島町に住みながら全国の定住政策に取り組んでいるファイナンシャルプランナーの泉谷勝敏氏"も、地方移住政策についてこのように言及している。

「こは自治体側と移住者側のどちらにも言えますが、そもそも地方移住施策は誰のための政策かと言えば、言うまでもなく自治体と地元住民のためのもの。それを、移住者のためのものだと勘違いしている人が多いです」

 

「一部ではありますが、金銭的問題から都心に住めなくなり、地方に逃げてきたと思われる若者もいます。きっと人間関係に疲れているのでしょうが、集まりにまったく顔を出さないし、電話にも出ない。災害の復旧も一切手伝わない。田舎は都会で疲れた人間の受け入れ先ではないんです」

 

 もし私が地方に住むとしたら、2番目の「都会で疲れた人間」に当てはまるだろうが、やはり都会に馴染めず地方で静かに過ごしたいだけ、という人間は地方移住とは言えないようで、あくまで余所者扱いなのだろう。「受け入れ先ではない」と突っぱねるほどの辛辣さである。

 しかも、集まりに参加しなかったり、知らない人間からの電話に出ないだけで変人扱いだ。(災害被害に無関心なのは、意見が分かれると思うが)こうした風習は、干渉されたくない人間にとって非常に辛いものだ。だから若い子が出て行っちゃうんだろうなあ…

 

 ただ、「そもそも地方移住施策は誰のための政策かと言えば、言うまでもなく自治体と地元住民のためのもの」という言葉には違和感がある。自治体と地元住民のため、というのはモチロン重要なんだけど、移住者はそこに含まれない、という言い方だと、自治体と地元住民が余所者を仕方なく受け入れて"やっている"と捉えられないだろうか?

 同じそもそも論でいえば、若い人間が定着しなくて困っている自治体と地元住民側のSOSとして始めた政策なのだから、彼らと同じように移住者側にもメリットが無ければ、政策として成り立たない。給与を与えずに労働の義務だけ課しているようなものだ。

 ヤフーニュースのコメントには「地方移住の条件を明記するべき」という意見もあった。地域活動に参加して欲しかったり、集会や電話に出て欲しいなら、報酬と一緒にキチンと明示した方がいいだろう。おカネが絡むことなのだから、移住希望者には何らかの審査も設けるべきだ。

 一方で、自治体や地域によっては暮らしてくれるだけでOK(=人口や財源が増えればそれで良し)という場所もあるだろうから、そういうとこは格安賃貸や地元情報(観光客向けのじゃなくて、住民の年齢層、食品の値段、風習のような、住む際に実用できる情報)を提供するだけにして、おカネを出すにしても地域の特産品プレゼント程度にするとか。干渉が嫌いな人間なら、その程度の方がむしろ有難い。

 

 まあ、山口県阿武町の事件については、地方移住云々以前の問題だ。(被害者側も加害者側も)だから、この事件だけで地方移住について語るべきではないだろう。

 でも、この事件を受けた地方移住政策当事者の本音を聞けたことは、私にとっては収穫だった。やっぱり、私のような非社会的な人間は「地方移住」して地元民になるよりも、「お引越し」して余所者として暮らす方が性に合っていそうだ。