セミリタイアするまで非正規

正社員になれないことが分かった三十代。労働者のままでは死にかねないので、非正規のままセミリタイアを目指している、色んな意味で駄目なヤツ。

推薦入試で救われる子供がいるなら、良いんじゃないでしょうか

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大学受験がシューカツ化している、という記事。特に驚くことはない。大学が勉学の場という定義は、少なくとも文系科目に於いては、私が在学していた10年前からとっくに破綻していた。文字の歴史とか哲学の成り立ちとか、真剣に勉強している人間は物珍しい存在だった。理系は教科書があって目標もハッキリしているので、きちんと専門分野について学ぶ人が多かったけれど、現在は分からない。

私が驚いた、というより教育現場に改めて失望したのが、「学問を教える場で学問の意味を教えない」という点だ。学ぶべきことが定められ、それを大人が子供に学ばせる。これ自体は良い。ただ、何故それを学ぶのか、が抜けている。これが抜けていることと、記事にある推薦入試(学問を必要としない入試)の増加は関係があると思っている。

そもそも、「何故それを学ぶのか」を教える側は把握しているのだろうか? 文部科学省に言われるがまま、右から左に子供へ伝達しているだけではないだろうか? もしそうならば、その人に学問の意味を教えることはできない。自分が考えていないことを、教えることはできない。

次に、日本の教育現場そのものが、学問の意味について子供に啓蒙することを、どう考えているか。学問の意味について大人が教えれば、子供は少なからず、それについて自主的に考える。私はどうしてこれを勉強してるんだろう、何の役に立つんだろう… こういうありきたりで純粋な問いかけは、小学生の頃はそれで終わってしまっても、中学高校くらいに自我が成長すると、子供たち一人一人が独自に発展させているものだ。どうしてこれを勉強しているのか?自分の成長や生活のためだ!何の役に立つのか?やりたいことを実現するために役立てるんだ!この「成長」「生活」「やりたいこと」は、勿論、子供たち一人一人によって内容は様々だ。進学の段階でここまで考えられれば、行きたい学校、学びたい学問は自ずと見えてくる。教育現場から自主的に離れることも選択肢の一つだ。

で、こういった子供の成長方法は、日本の教育現場が目指すものなのかどうか、という問題がある。日本の主な教育現場(=学校)は、軍隊から派生したものだ。軍で重要なのは規律と統一性であり、私が上述した「一人一人によって内容は様々」な集団とは相反する性質だ。もしも文部科学省がかつての軍隊を理想としているならば、学問の意味を子供たちに啓蒙してはいけない。自分の行動の意味を考えるということは、その行動を指揮する組織が掲げる規律に疑問を抱かせるきっかけになり、一人一人が違う考えや目的をもつ統一性のないバラバラな集団になってしまうからだ。離反者だって現れるだろう。これでは、イザというときに指揮者である教育者の号令が届かない。

そして、今回の推薦入試増加という事実。記事中では『「入学定員の確保」と「伸びしろのある学生との出会い」』という表現を使っているほか、共通テストの整備の遅れ、地方大学の衰退(これを阻止するために大学の定員数が厳格化され、一般入試の競争率が上昇したため、推薦入試に流れているのでは)も挙げている。また、個人的には記事中に登場する入試対策の専門塾も一役買っているのではと思う。様々な要因があるが、「学問を教える場で学問の意味を教えない」ことが何の影響を与えているのか。ここから先は完全に自論だ。

学問の意味を教えないことで、「子供たちが教育現場に閉じ込められてしまっている」ことが、推薦入試の増加に関係していると思う。学問の意味を考えるということは、行きたい場所を自分で決める、ということでもある。大学にしろ、就職にしろ、それ以外の組織にしろ、考えた結果、行きたいから向かう。では、行きたい場所がなかったら? 当然、大半の人間は今いる場所に残ることを選択する。進学の場合で言えば、同じ教育現場である大学以外に行きたい場所がない、ということになる。この状況こそ、「教育現場に閉じ込められてしまっている」と言えないだろうか。少なくとも、自主的に大学に行く人間とは似て非なる状態というのは分かってもらえると思う。もちろん、この現象自体は新しいものではない。日本ではずーっと指摘され続けてきたことだ。但し、今までは学問が得意な子供と苦手な子供で、行ける大学のレベルが違っていた。学問への興味は等しくもって無いのに、学問が向いているか否かのみで明暗が分かれてしまっていた。たまたま、お勉強が苦手な子供は泣くか努力するしかなかった。しかし、そこに学校側の『「入学定員の確保」と「伸びしろのある学生との出会い」』という事情、言い換えれば、とにかく学校維持のために子供が欲しい、学力が低くてもそれ以外に何かあればウェルカム!という大人の事情による推薦入試が増やされる、という知らせ。大学以外に行く場所がないけど勉強はしたくない、という子供にとっては朗報だ。閉じ込めたい大人と、閉じ込められたい子供たち。両者の悲願が実を結んだ結果、推薦入試が増えている… と、いう風に私は見ている。

これの大学卒業バージョンがシューカツであることは、言うまでもない。会社と学校って似てるよなーと思っていたけど、あながち間違いでもなかったワケだ。全然学校っぽくない会社もあるけどね。

 

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